まちづくり・フェスティバル
都市生活クリエータブログ

防犯と都市(古田マリ)

古田マリ(Furuta Mari)/建築家

犯罪をデザインで防ぐという環境防犯設計の調査研究中。
犯罪者は他人に見られるのを嫌うが、こういった心理をうまく利用して
犯罪が起こる確率を低くするのが防犯設計の基本的な考え方。
領域は建物から都市計画まで広い範囲に及ぶ。

照明を防犯設計にどう使うか 1

2007年4月17日

 防犯に照明が効果的であるというお話を前回いたしました。しかし外部から入口が見えるということは、隣人や通行人に目撃される確率を上げるとともに、犯罪者が標的を発見する機会を増やすことにもなります。既にお話したように、泥棒などの犯罪者の狙う獲物を外に出さないというのは大原則です。イタリアを旅行された方は、お洒落なショップのショーウィンドウが夜間休日に鉄格子で覆われているのをご覧になったことがあるのではないでしょうか?高価なジュエリーやブランド品を夜間無防備に通行人に向けて飾っているところはおそらくないでしょう。

 照明は以下の2つの点で犯罪の発生に間接的な影響を与えています(註1)。第一に、今お話したように、暗くなってから警察や住民による監視の目を高めるのを助ける役割があります。もし監視力が高まり、その結果面倒なことやリスクが増え犯罪の報酬が減ると犯罪者に思われるのなら、犯罪発生レベルは低くなるでしょう。また監視の力が強くなっても犯罪者が気にしないなら、明るい照明でも効果がないことになります。第二に、良い照明にお金を掛けることが犯罪発生レベルを左右すると言うことで、コミュニティ意識を強めることなり、それによってある種の社会統制力を強めることが出来るのです。こちらは、昼夜問わず効果がありますが、照明以外の他の影響を受けやすいのも事実です。

 英国では、90年代後半から照明の防犯への効果の研究がかなり詳しく行われてきました。様々なデータがありますが、照明の改良工事が他の街づくりの計画と同時に行われ試験データが取り難いため、結果は単純ではありません。ただ一つはっきりいえることは、明るい照明にするとそこを通る地域の人たちが安心するということ。そしてもちろん、犯罪の発生率も落ちると言われています。残念ながら、今手元に資料がないのですが、オーストラリアの海辺の高架下の歩道はジョギングをする人たちが何度も襲われる危険な場所でしたが、照明を下から高架全体をライトアップするような心地よいものに換えてからは、犯罪が起きなくなったそうです。東京ですと、護国寺近辺の高速道路の高架下の一部にライトアップされたところがあります。

 下記の写真(NICP A.Hushen氏提供)はシカゴにある学校建築なのですが、階段室を全てガラス張りにし、加えて光の色を黄色にして階段室のみならず、外部の歩道まで照明するように計画されています。階段室を通る学生や職員が外で何か異常があった時に目撃できるように敢えてこのように設計しているのです。これが防犯設計の基本です。
cpted.jpg


 監視の目を多くするために、例えば建物の4面にかならず人の視線が出来るように窓を作るのです。少し話がずれてしまうのですが、70年代に出来た団地の多くは長方形の短辺に当たる部分に窓がなかったり、曇りガラスだったりします。こういった団地が長く続くと、住人が通る通路の部分はブラインドスポットになり、何か事件が起きても誰も目撃する者がいないといった環境が出来てしまいます。

註1IESNA(北米照明電気学会) Security Lighting Community “Security Lighting for People, Property, and Public Spaces” IESNA G-1-03

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